プロジェクト型保育について

プロジェクト型保育について

 子どもの興味関心からテーマを探して遊びや研究などを楽しんで行きます。
テーマのきっかけは、子どもたちが注視するヒトやモノ・コトであったり、子どもたちが持っている感性や感受性センシビリティーから湧き上がる思いや願いを保育者がくみ取って共感し、それを『つぶやき』として大切にしながらテーマを拾い上げて活動を企画していきます。
 テーマは興味関心の遊びが中心ですが、ルールや行事なども含まれてきます。実践では、子どもたちが主体的に進めていきますが、まだ知らないことや未経験の部分もありますので保育者が気づきの為に参考となる資料(絵本や図鑑、チラシ、インターネットなど)を準備したり、テーマ内容をさらに理解し深めていくために、地域のある場所へ観察や見学を企画したり、制作では新たな技術を学んでいくことも必要になります。保育者は活動の展開から必要となるマテリアルのモノの準備やヒト・コトへの調整を事前に計画し子どもたちのサポートをしていきます。
 計画は子どもたちの興味関心がテーマになりますので能動的な活動が期待され、プロセスをたどっていくと一つの物語として活動がつづられていきます。仲間たちとコミュニケーションを楽しむこと、目標に向かう姿勢、思考し行動に移すこと、アクティブラーニングの要素が含まれておりますので『主体的で対話的で深い学び』の基礎を体験していきます。

 活動の流れ:子どもの興味関心→保育者の準備→ミーティング(対話)→計画→活動準備→実践→振り返り→修正→実践

社会性の獲得

 テーマについてプロジェクトチームが発足し保育者のサポートを受けながらミーティングを通じてディスカッションをしていきます。拾い上げられた意見をwebに書き出し、活動の方向性について一緒に計画を立てていきます。子どもたち自身の意見がwebに反映されると、これからのモチベーションも高まり見通しが明確になっていきます。チームで協調する心や協同して取り組みますのでルールも必要となります。活動プロセスの途中では互いが修正を掛けながら目標達成に向けてチームで進めていきます。仲間とプロセスを楽しみ遊び込むことで達成感を味わい、目標に向かう粘り強さと同時に規範意識を育みながら社会性の一歩を踏み出していきます。

感受性・感性・表現力の獲得

実践活動のユニットは、描画、造形、記録、探索、研究、植物栽培、クッキング、など様々です。探求心を高めるために絵本や図鑑で調べたり、地域社会や季節や自然の不思議を探しに出かけます。アトリエでは、テーマからイメージしたものをアートとして楽しみ表現することで自分に気づき、相手との違いを楽しんで行きます。アートで表現する感性や言葉で伝えていく表現力を培っていきます。

認知力・非認知力の獲得

 ミーティングのwebでは文字や数の概念に触れ、制作では指先を使ったり考えながら試行錯誤を繰り返したり、各場面において様々な経験を積み上げていきますので技術や知識の獲得につながっていきます。仲間たちと活動について話し合うことで思考することが増えて行きますので脳が刺激されて認知の定着を促していきます。意見の相違などから他者と折り合いをつけて、より良いものを創り上げていくプロセスは、数値(IQ)では計れない、生活をより豊かにしていく力『非認知能力』の獲得が期待されますので、子どもたちが成長し、10年後20年後に『持続可能な未来に繋げる担い手となる』そんな願いがこの活動に込められています。

ミーティングスペース

 プロジェクト型保育の主役は子どもたちです。3.4.5歳児になると仲間たちとこれからの方向性について話し合いの場が重要となりますので、各グループやチームで行えるようにミーティングコーナーを設置しています。斜めやお隣、向き合える位置を確保し、他の空間が視界に入らないように、話しに集中できるように配置しています。(※ソシオペタルの配置)

アトリエコーナー

 プロジェクト活動で計画されたアート(造形、描画)の遊びを行う、倉庫のような作業場です。
マテリアル(素材、廃材、自然物、画材、ツール(工作道具、ハサミ、ノリ、ボンド、テープ、段ボールカッター))などが並べてあり、イメージを具現化するために絵に描いて設計図にしたり、いろいろな素材とイメージを結びつけて造形を楽しみながら、イマジネーションを広げる空間です。
特にマテリアルは廃材や自然物を意識して並べることを心がけています。再利用からリユースする意識をもちながら物を大切にしたり、資源を有効に使う力を育んでいきます。

食育活動

プロジェクト活動のテーマには食育に関することも取り上げられます。
食べてみたい料理や不思議に思う食材などからテーマが始まれば、クッキングの活動を企画します。レシピの具材になる野菜を育てて成長の様子を観察したり、食材を調べて確認し必要なものは近くのお店に買い物に行って調達したりします。栽培や準備・クッキングを経験することで食への関心も高まり、食べず嫌いから克服できた子もいます。

地域交流

 活動が深まると疑問に思うことや不思議なこと、調べたくなることが沸き上がってきます。
 園は町の中心部にあることから、商店、図書館、消防署、といった公共の機関にも協力をいただき、お話を聞きに行ったり実際に見てみたり、新たな発見や知識を学んでいます。
 ラーメン屋さんのエピソードでは、スープの色や味の違い具材などを知ることが出来たそうです。保育活動のお店屋さんの制作では、ラーメンの具材や汁の色などにこだわりが表現されていて学んだ知識が生かされていました。
また、老人施設等への訪問や小中学校等と連携して交流会を行います。地域の方との触れ合いは、いろいろな人たちの存在を知ることができ、自分たちは地域社会の一員であることを感じながらパートナーシップを学んでいます。
(現在はコロナ禍のため活動が縮小されています)

自然探索

 日本には四季折々の季節があり自然界を意識して見ていくと、その移り変わりを感じたり生命の不思議に触れることができます。
 公園の樹木や田んぼ、道端にある植物、昆虫や小鳥など、周りを意識して見ると命に溢れていることに気づきます。雨上がりの匂いや水たまり、キラキラする水滴、空に浮かぶ雲など、五感を刺激する要素もたくさんみつかります。
 多くの刺激から受けた感覚から、きれいなものを美しい・小さなものを愛おしいと思う感受性をたくさん蓄えて、言葉やアートに変容させて表現する感性を引き出すことができます。
 心の豊かさが育成され、私たちが暮らす自然界の豊かさに気付く基礎となっていきます。

TOP